CL決勝前必読!ポストポゼッションサッカー時代(その4) fgo vol.110 

itch の Football goes on vol.110
ポストポゼッションサッカー時代 その4


現代サッカーの戦術トレンドの歴史をを読み解くシリーズ「ポストポゼッションサッカー時代」の第4弾いきましょう!

前回では「ポゼッションサッカー」と「対ポゼッションサッカー」の対立構造の流れをおおまかに説明しました。そしてその流れにそった対決が今季のCL決勝バルサ×ユベントスであると。

おさらいすると「ポゼッションサッカー」と「対ポゼッションサッカー」はポゼッション対プレッシングがメインの対立になっているという話でした。分かりやすくいえば「バルサ対ドルトムント」だと。

その流れの中に現れたのがもうひとつの「対ポゼッションサッカー」である「カテナチオ」です。

イタリア語で「かんぬき」を意味する「カテナチオ」とは、自陣ゴール前を人数で埋めて固め、そこからカウンターを仕掛ける「後陣速攻」戦術です。

ドルトムントの「前陣速攻」は、前がかりに相手ゴールに近い位置でプレッシングを行い、奪った勢いそのままに相手ゴールを強襲するスタイル。要するにボールを奪う、守備の網を引く位置の違いですね。

「カテナチオ」発祥の地であるイタリアは、その守備戦術を駆使してW杯を4度制覇しています。しかしあまりに守備的な「カテナチオ」は、攻撃サッカーに傾倒する現代サッカーにおいて衰退。その生みの親であるイタリアでさえ「脱カテナチオ」を宣言する事態になっていました。

しかしその時代遅れの「カテナチオ」が、あろうことか攻撃サッカー大国スペインで突如復活します。シメオネ率いるアトレチコマドリーです。

シメオネが就任した頃のアトレチコマドリーは、古豪としての伝統だけがある中堅チームにまで成り下がっていました。

そんなチームに現役時代そのままの闘将として現れたのがシメオネです。当時のアトレチコは借金を抱え、自軍の選手を切り売りしてなんとかやりくりをしている状況でした。予算不足からスター選手を多額の移籍金で獲得する事などできません。

シメオネの方法論はシンプルでした。我々はレアルやバルサのような貴族ではない。労働者だ。全員で汗をかいて、全員で戦って、恵まれた貴族たちに一泡吹かせよう。

そしてシメオネが採用した戦術が「終わった戦術」とされていた「カテナチオ」だったんです。

「カテナチオ」は後陣速攻戦術です。確かに危険なゴール前のバイタルエリアを人で埋めれば失点のリスクは減りますが、そこから遠い相手ゴール前まで攻め上がり、ボールを失えば直ちに自陣ゴール前まで戻る、その繰り返しは凄まじい消耗度です。

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徐々に選手の足は止まり、前線と最終ラインは間延びし、スカスカの中盤は相手の使い放題。自陣に釘づけになり、必要以上に相手のポゼッションを上げてしまうワンサイドゲームになりがちです。

実はこの「カテナチオ」を最初に「対ポゼッションサッカー」として採用しだしたのはモウリーニョが先でした。インテルで「カテナチオ」を使いCLを制覇しています。

しかしそのモウリーニョですら消耗度の高い「カテナチオ」を持続させる事ができず、最終的にはプレッシングとの併用に流れていきました。

しかしシメオネはその「カテナチオ」の泣き所である消耗度の高さを、チーム全員が例外なくハードワークすることで成立させてしまいます。

点を取る役割のストライカーであるファルカオ、ジエゴ・コスタですら例外はありません。全員がまず自陣で相手を待ち構え、ライン間の距離をキープさせ、90分間間延びさせない。

旧来の「カテナチオ」では重労働を免除されていたストライカー。それが逆に穴となり相手の一方的な攻撃を生んでしまっていましたが、シメオネのアトレチコでは逆にツートップが一番キツいポジションです。

相手ボールのたびに自陣まで戻る事が義務付けられ、相手のピポーテにしつこいプレッシングをすることが求められます。もちろんマイボール時には自陣から相手ゴールまで殺到する事も求められます。

しかし初期設定に無理があるので、流れの中からはどうしても点がとれなくなりがちです。そこでゲームの流れとは関係なく点が奪えるセットプレーに全力をかたむけます。

そうして「カテナチオ」を成立させてしまうと、面白い現象が起こりました。


ビッククラブもスモールクラブも基本的に「ポゼッションサッカー」に染まりきるリーガで、アトレチコマドリーは次々と勝ち点をあげていくんです。

ついにアトレチコは「カテナチオ」でリーガ制覇を成し遂げてしまいます。

その有効性は決してリーガ限定ではありませんでした。CLの舞台においてもアトレチコは決勝へ進出する事にも成功します。

シメオネの「カテナチオ」とは、要するに「カテナチオ」の最大の利点である安全性を確保しながら、構造的欠陥をハードワークで最小限化させる、というものでしょう。

中途半端な「カテナチオ」は「ポゼッションサッカー」の格好の餌食ですが、突き抜けた「カテナチオ」はいまだ有効であることをシメオネは証明しました。

そしてそれに続いたのが、今季のファイナリストであるユベントスです。

現役時代にシメオネとおなじく「潰し役」だったコンテが、ほぼ同時期にイタリアの名門に就任しました。

面白い事にコンテもまたシメオネと同じくハードワークをベースに、ユベントスに伝統の「カテナチオ」を復活させます。

コンテの「カテナチオ」の方が、さすがはカテナチオ母国だけにより純度が高く、4バックを多用するシメオネよりもさらに後方中央をガッチリ固める3バックを採用していました。

しかしこのサイドを捨てた実質的に5バックである3バックはやり過ぎでした。サイド攻撃に乏しいセリエAでは通用しても、逆にサイド攻撃がメインとなりつつあるヨーロッパでは通用しませんでした。

そのコンテの「カテナチオ」にバランスをもたらしたのが現指揮官のアレグリです。


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アレグリは当初は選手が慣れている3バックを採用しましたが、徐々に4バックへ移行。ドメスティックなものからヨーロッパナイズされた「カテナチオ」に移行する事に成功しました。

「カテナチオ」は「対ポゼッションサッカー」戦術の中では少数派です。しかしそれが故に、「対・対ポゼッションサッカー」化しているバルサにとっては、もしかしたらもっともやっかいな戦術かもしれません。

今季のバルサは「対ポゼッションサッカー」対策として速攻を多用します。プレスの網を避ける為にロングボールも多用します。

前がかりになってしまうプレッシングの弱点を突く形です。押し上げられたディフェンスライン後方に広がるスペースを「MSN」で狙い撃ち。そのスタイルでリーガ、CLで得点を量産しています。

しかし「カテナチオ」には後方に広がるスペースは存在しません。ユベントスを相手にバルサは今季最大の武器が封印された状態、といえます。

現に今季のバルサは、リーガで徹底的に引いてきたチームに対して取りこぼしています。ペップバルサの時には得意にしていた、引いた相手に対しての圧倒的な「ポゼッションサッカー」はもはやありません。

今季ファイナルは「ポゼッション」×「対ポゼッション」という、近年続いてきた対立軸に新たな局面をもたらす対決になる。その流れが掴めてもらえたでしょうか。


CLを観ていてつくづく思うのが、サッカーという競技がいまだ完成していないという事です。


例えば野球。内野は5人、外野は3人、フォーメーションはもはや完全に決まっています。


おおよそ100m×70mのスペースに11人を配置し、手を使わず相手ゴールに多くボールを入れた方が、勝ち。サッカーとは誕生してから様々な変化、流行がありつつも、そのあまりの自由さに、いまだ「これだ」という完成形が無い不思議な競技です。

でも、だからこそ面白いんです。完成してないからこそ、ペップバルサのような突然変異のウイルスのような対処できないチームが突然現れる事もある。

世界最高レベルのチャンピオンズリーグではそれが現在進行形で確認する事ができます。いま、世界のサッカー界で、何が起きているのか。


それを知らずに世界一の国を決める戦いであるワールドカップに挑むのは、地図を持たずに大海原に漕ぎ出すのと同じだと、僕は考えています。


スターがひしめく華々しいCLの舞台と、サッカー日本代表はつながっています。ワールドカップとは、そのスター達を倒しにいく戦いです。

世界のスター達の夢のようなプレーに酔いしれるその頭の片隅に、どうしたらこの人達を倒せるのか、そんな風にCLを観戦するとより興味深く、そしてより身近に、楽しめるんじゃないでしょうか。


ワールドカップへの戦いがいよいよ6月から始まります。アジア3次予選です。


CL決勝はその戦いに持ち帰れる物がたくさんあるはずです。はたして今年はどんなサッカーの歴史が更新されるのか?そこはやっぱり生で!みんなで!盛り上がって観戦しときましょう!


幸いにCL決勝はウィークエンド、土曜日開催です。翌日は日曜日、心配は無用!今年はあんまり観てないんだよなあ、なんて人も大丈夫!我々の仕掛ける「De La Football Live!」は「みんなで楽しく」がモットー!ばっちり同時解説させてもらいますから!


そんな訳でいよいよ迫ったCL生観戦イベント「De La Football Live!」ファイナル!フットピーポー達よ!会場の栄「imiri」で待ってるぜ!


詳しくは詳しくはイベントHPをチェック!(ココ→http://delafootball.wix.com/delafootballlive)ではでは~会場にて!


ポストポゼッションサッカー時代(その3) fgo vol.109 

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ポストポゼッションサッカー時代 その3

前回のつづき

「超ポゼッションサッカー」とは何か?現在進行形でまだ完成していないので明確な説明が難しいのですが、要するにプレッシングを無効化するポゼッションの模索です。

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ペップのバイエルンでは攻撃時にはもはやフォーメーションは存在しません。おおまかに右と左にそれぞれロッベンとリベリーを頂点にするトライアングルを2つつくり、その際のポジショニングは自由にポジションするロッベンとリベリー次第という調子です。

プレッシングとは相手選手を自分たちの布陣の網で包囲してボールを奪う戦術なだけに、形を持たないバイエルンの攻撃はプレッシングのかけようがありません。

今季はそれがさらに進化し、バイエルンの攻撃時には右と左に五角形が二つあるだけのようなとんでもない事になっています。

それを実現する為にペップはどんどん前線へ攻撃参加する人数を増やしていくため、3バックを多用するようになりました。センターバックが3人のスリーバックではありません。むしろ逆、センターバック2人、時には1人にサイドバックを足す超攻撃的な3バックです。

さらにバルサ時代もこだわっていたプレッシングを、ゲルマン民族のフィジカルを利用してより徹底的に行っています。「対ポゼッションサッカー」戦術のプレッシングを取りいれる真意、それはあくまでも攻撃のため、ボールを保持するために、です。

ボールを保持する時間を増やすために、相手ボールの時間を1秒でも早く減らす。そういう理屈です。

おそらくペップの理想とは永久にボールを保持しつづけ、永遠に攻撃を行い続けることなのではないでしょうか。たしかにそれが実現できれば負けるどころか、点を取られることもないでしょう。なぜならサッカーとはボールを持っていないと攻撃できない競技だからです。相手は永遠に攻撃ができない。そういう理屈になります。

しかしペップの「超ポゼッションサッカー」はあまりに途方も無く、ただでさえ実行することに選手を選ぶ「ポゼッションサッカー」の条件がより厳しくなり、それこそ選ばれし者のみが実行できるサッカーになってしまっています。

それに比べ、そのペップの後を継いだルイス・エンリケのバルサが出した答えは対蹠的に現実的です。

プレッシングやカウンターの餌食になりやすい無駄なパス回しを制限し、「ポゼッションサッカー」を行う選手を、それが確実に実行できるスーパースターのみに制限する。

各駅停車のショートパス回しは相手の守備隊形が整っている時か、こちらが休んだり時間を使いたい時だけ。プレッシングで前がかりになった相手の後方が空いてる時には、怪物的なスリートップに長いボールを使ってでも勝負させる。

「ポゼッションサッカー」が抱えるリスクを取り除き、良い所だけをバランスよく使う。「対ポゼッションサッカー」へ対抗する「対・対ポゼッションサッカー」という考え方です。

ですから今季CLのセミファイナル、バルサ×バイエルンは非常に興味深かったです。はたして「ネクストポゼッションサッカー」はどちらの方法論なのか。

ロッベン、リベリーというペップのサッカーを行う上で絶対的な駒がいなかったので、僕の中で結論は出ませんでした。しかし結果はより現実的なエンリケ・バルサの勝ち抜けです。決勝の地に「ポゼッションサッカー」代表として進出したのはエンリケ・バルサでした。本当にこの1戦はベストメンバーで観たかった…

そして一方の相手はユベントスです。かの守備大国の代表としてこれまでヨーロッパのゴールに鍵をかけ続けてきたユベントスが、長い時をへて復活。決勝の地までやってきました。

その守備方法はカテナチオ。「ポストポゼッションサッカー」時代の戦術争いに、伝説のカテナチオをバージョンアップさせ、大会最少失点という結果をひっさげて、ユベントスが「対ポゼッション」の代表として、バルサと対峙する事となりました。

つまり、奇しくも今大会の決勝戦は近年世界のサッカーで対抗軸としてあった、「ポゼッション」vs「対ポゼッションサッカー」その構図どうりの対決となったわけです。

前回の冒頭で今大会の決勝の組み合わせは、象徴的なチームの対決となったと書いていたのは、つまりはこのクソ長い前提があったわけです(笑)でもこのサッカー界の歴史の流れを知ると、ぐっと決勝戦が面白くなりませんか?


次回はプレッシング全盛の「対ポゼッションサッカー」戦術に突然現れた「カテナチオ」。その特異性をアトレチコマドリーとユベントスをもとに書いていきます、決勝戦の前にね!


次回に続く

ポストポゼッションサッカー時代(その2) fgo vol.108 

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ポストポゼッションサッカー時代 その2


さあ数回に分けてつづく現代サッカーの潮流を読み解くシリーズ「ポストポゼッションサッカー時代」の第二弾!

前回では「ポゼッションサッカー」を発明したペップバルサ、およびスペイン代表がサッカー界のタイトルを独占していた時代に、「対ポゼッションサッカー」という対抗戦術が生まれだしたところまでを書きました。

「対ポゼッションサッカー」の代表的なチームとしてモウリーニョのレアルを例にあげましたが、もうひとつ象徴的なチームがあります。

バルセロナの影響を受け、急速にポゼッションサッカー化したドイツのバイエルンミュンヘンや、ブンデスリーガのビッグクラブに対抗する形で生まれたクロップのドルトムントです。


「ポゼッションサッカー」を実行するにはボール扱いに優れたテクニックのある選手が必要です。しかしボール扱いに優れたテクニックのある選手は高価。お値段が高い。

予算が豊富な国内第二、第三のクラブならまだしも、持たざる者、非ビッグクラブには「ポゼッションサッカー」はやりたくてもやれない現実があります。

それを逆手に取ったのがクロップでした。マインツという当時は2部のスモールクラブで指揮をとっていたクロップは、持たざる者でもできること、「走る」事を徹底的に突きつめて、独自の「対ポゼッションサッカー」を編み出します。

前がかりに高い位置でプレッシングを行いショートカウンターを目指す前陣速攻戦術、ゲーゲンプレスです。


クロップは低迷するドルトムントにゲーゲンプレスを引っ提げて就任するや、2010シーズンから2連覇を達成します。そしてポゼッションサッカーを行っていたバイエルンミュンヘンを手玉に取るそのスタイルは、バイエルンキラーと呼ばれだします。

「ポゼッションサッカー」にはプレッシングが有効である。そしてプレッシングは「ポゼッションサッカー」と違い実行する選手を揃えるのにお金がかからない。貧者の、持たざる者の、弱者の武器である。クロップはそれを証明。ドルトムントをCL決勝の舞台にまで進出させます。


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ドルトムントの躍進は世界のスモールチームに勇気を与えました。テクニックは無いかもしれないけど、走る事ならできる。「対ポゼッションサッカー」戦術の筆頭として世界中であらためてプレッシングが注目されだします。


結果世界は二分されつつありました。「バルセロナか、ドルトムントか」。「ポゼッション」なのか「対ポゼッション」戦術の筆頭「プレッシング」なのか。

ボール扱いに優れた天才たちは、ハードワークという根性勝負に巻き込まれ輝きを失いだしました。モウリーニョ・レアルのリーガ制覇、クロップ・ドルトムントのドイツ王者、そしてその「ゲーゲンプレス」を採用したハインケス・バイエルンの三冠。

「対ポゼッションサッカー」戦術の反攻が始まりました。


さあ試行錯誤をしなければいけなくなったのは、今度は勝てなくなりだした「ポゼッションサッカー」勢の番です。


中途半端な「ポゼッションサッカー」はもはやプレッシングの餌食です。そんな中、「ポゼッションサッカー」のパイオニア、グアルディオラが動きます。予想外のドイツのビッククラブ、バイエルンミュンヘンへの就任です。

そのバイエルンでグアルディオラが実行しだした方法論とは、「ポゼッションサッカー」を超える「超ポゼッションサッカー」とでもいうようなサッカーでした。


つづく

ポストポゼッションサッカー時代(その1) fgo vol.107 

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ポストポゼッションサッカー時代 その1


フットピーポーよ!さあいよいよ世界のサッカーの頂点に立つ戦い、チャンピオンズリーグ決勝が来週末にやってきます!

今回はここまでのチャンピオンズリーグの流れを振り返る事で、現代サッカー最先端の流れ、トレンドを把握しようと思います。

しかしこれがおそらくハンパじゃない長文になる予感がヒシヒシとしますので、今回は数回に分けてじっくりとお届けしますね。

セミファイナルの死闘を制し、決勝ベルリンの地にはバルセロナ、ユベントスが進出。この生き残った両チーム、いまサッカー界で何が起きているのかを考える時に、象徴的なチームが決勝へ進んだと思っています。


ここ数年のサッカー界の主役とは、僕はやはりジョゼップ・グアルディオラだったと考えています。


ペップがバルセロナに就任した2008年からそれは始まったと思います。バルセロナというチームのアイデンティティであるショートパスを多用し、あくまでもボールを保持し攻撃に特化したスタイルです。

ゲームが終わってみれば圧倒的なボールポゼッション率がゲームスタッツに現れるそのスタイルは「ポゼッションサッカー」と呼ばれ始めます。

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それまで見た事の無いペップバルサの「ポゼッションサッカー」は、まるでワクチンの無い新型ウイルスのようにヨーロッパで猛威をふるいます。ヨーロッパのスタイルは基本的に速攻がメインだったのが、ペップバルサの出現により、ヨーロッパのサッカースタイルの風向きが変わります。

「ポゼッションサッカー」に多くのフォロワーが生まれます。そしてそのフォロワー達も好成績を収めますが、そこはフォロワー。ペップバルサの劣化コピーが多く生まれる中、本家のバルサ、およびその選手達で構成されるスペイン代表にはかないません。「ポゼッションサッカー」の頂点に君臨するバルサ、スペイン代表がサッカー界の主役としてあらゆるタイトルを総なめにする時代が続きます。

しかしそこに「ポゼッションサッカー」という新種のウイルスに有効なワクチンを開発する人物が現れます。モウリーニョです。

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モウリーニョはオリジナルの「ポゼッションサッカー」に、コピーの「ポゼッションサッカー」で挑んでも永遠に勝てない事を熟知していました。完全無欠に思え、サッカーの理想の形とまで言われたペップバルサの弱点を突く戦術。「対ポゼッションサッカー」の戦いが始まります。

モウリーニョがバルセロナの永遠のライバルであるレアルの監督に就任したこともあり、「対ポゼッションサッカー」の戦いは数多く行われる事になりました。モウリーニョは毎回戦い方を変え、「対ポゼッションサッカー」を模索しました。

キープレーヤーメッシにマンマークをつける。後方に引きバイタルエリアを人で埋めてスペースを消す。パス回しを狙ったハイプレスを浴びせる。

それは時にうまく行き、時に失敗しました。しかし重要なのは完全無欠と思えた「ポゼッションサッカー」にも対抗策はある、という発見でした。それは同じ「ポゼッションサッカー」で本家を上回るよりも、その弱点を突く「対ポゼッションサッカー」の実行だ、と。


モウリーニョの発見がまたヨーロッパの風向きを変えます。


それまで絶対的だったポゼッションの王、バルセロナが簡単には勝てなくなりだします。そこに追い打ちをかけるペップのバルサ離脱。

「バルセロナの終焉」そんな言葉がささやかれ始めます。


次回につづく


CLセミファイナル2ndレグ プレビュー(後編)fgo.106 

itch の Football goes on vol.106(後編)
CLセミファイナル2ndレグプレビュー


5日27時30分キックオフ「ユベントス×レアルマドリード」、これが大方の予想を裏切るまさかのオープンな試合になってくれましたね!

キックオフの笛とともに前がかりに攻撃に打って出たホームのユベントスに、レアルだけじゃなくみなさんも面食らったと思います。自分もそうでした。しかしこれが大正解!この最初の思い切った攻勢でユベントスは試合のペースをうまくつかみましたね。


アトレチコとの戦いからアンチェロッティが採用しだした、セルヒオ・ラモスの守備的MF起用という策も、僕にはうまくいっているようには観えませんでした。むしろ、モラタに先制され得点が必要となった時間帯には、どうしてもセルヒオ・ラモスの所で攻撃の流れが止まってしまうというシーンが目立っていた気がします。

結局アンチェロッティは最後までセルヒオ・ラモス、ペペ、ヴァランのセンターバックを3人同時起用する布陣をいじらず。この試合を2-1で終わらせることをのぞんだ、という事になります。

2-2、2-3にすることができる代わりに、3-1のリスクを避けた、という事だったと思います。さすがイタリア人です。

しかしそれはきっとホームでの2ndレグに自信がある、ということでしょう。アウェイゴールを取った2-1ならば、1-0で決勝進出。それを実行する自信があるからこそ、1stレグでは動かなかった。

はたしてそれがうまくいくのか?それが2ndレグのみどころです。

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ユベントスの目的ははっきりとしています。90分間守りきれば12年ぶりの決勝進出です。難しいのはレアル。アウェイゴールという致命傷を避けながらも、最低でも1点を取らなければいけない。強気すぎてもダメ、弱気すぎても届かない、絶妙なバランスが求められます。

しかもそのミッションをベストではないメンバーで行わなければいけない。対照的にユベントスは先週末に待望のポグバがケガから復帰、しかも復活ゴールのおまけつきでこの1戦にベストメンバーで挑んできます。

もし、アンチェロッティがまたもや中盤の1枚をセルヒオ・ラモスに割くようならば、今度こそそれは消極的すぎでしょう。時間を味方につけているのはユベントスです。

おそらくユベントスはロナウド、ベイル、チチャの武器であるスピードを無効化するべく、どっしりと後方にかまえ、まずゴール前のスペースを消してくるでしょう。本来センターバックの選手が加わるぎこちないパス回しでは、崩すことが難しいと思います。

1stレグの攻撃力では、それこそあの同点においついた時のハメスによるノートラップ&ノールックピンポイントボレークロスのような奇跡的なプレーが起こらないかぎり難しいでしょう。勝利の必然性は下がります。

まあでも超スター集団のレアルならば、通常のクラブならばナンセンスなとにかく守備を固めての「奇跡待ち作戦」に賭けるのも、アリなのかもしれませんが。


保守的でバランスを取る事にかけては世界で有数のアンチェロッティがどのようにこの1戦にアプローチするのか。

そして守ることならばいまだ世界でナンバー1の守備大国イタリアの王者ユベントスの魂のディフェンスをこの1戦では楽しみたいと思います。

CLセミファイナル2ndレグ プレビュー(前編)fgo.106 

itch の Football goes on vol.106
CLセミファイナル2ndレグ プレビュー


フットピーポーよ!今年のGWのシメとして行われたスペシャルバージョンの 「De La FOOTBALL LIVE!」。いやあ2試合ともガッツリ満腹のすべらない試合!いいGWの終わりを迎える事ができました!

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まずは「バルセロナ×バイエルン」。

グアルディオラの初めてのカンプ・ノウへの凱旋は、ほろ苦いものとなってしまいましたね。

ブログやトークライブで、ペップがどのようにバルサの最強3トップ「MSN」に対向するのかを、みどころにあげたのですが、ペップは仰天の作戦できました。

3バック、というよりも、ボアテング、ベナティアにそれぞれスアレス、ネイマールをマンマークでつけ、左サイドバックのベルナトと右サイドバックのラフィーニャのふたりでメッシを上下でサンドイッチするという、2.5バックというかなんというかこれまで観た事のない「対メッシスペシャル」とでもいうような布陣で「MSN」を封じにきました。


つまりペップの「MSN」対策とは、中心である「M」を徹底的に抑える事で、機能不全を狙う、というものだったのではないでしょうか。


ベルナトとラフィーニャを縦に並べてきたというのがポイントです。これはメッシの後方に構え抜群のコンビネーションとホットラインを作るダニ・アウベスの攻め上がりを制限するという狙いがあったはずです。

つまりペップが考えるメッシ対策は「孤立化」。ボールを持てば止められないメッシ。ならばメッシを組織から孤立化させ、ボールが渡らない状態を作ってしまえばいい。という事だったんじゃないでしょうか?

この狙いはうまくいっていました。前半のある時間帯まではメッシはまるでアルゼンチン代表でのような、機能的にまわりの選手とからめない状態にされていました。

しかしここでその窮地を救う選手が現れます。ノイアーでなければ決められていた決定的なシーンを2度作りだしたスアレスです。

メッシを封じるというハイリターンのために犯していたハイリスク。広大なスペースを与えられた「SN」のうち、とにかく絶好調のスアレスが危険でした。結局ペップは変則3バックを断念。通常の4バックに戻してしまい、対メッシスペシャルは前半30分あたりで終了。

それともう一人重要だったのがラキティッチです。今季メッシを右ウイングに戻したエンリケは、以降同サイドにシャビでは無くセビージャからやってきたラキティッチを使い続けています。この日もそうでしたが比較的ポジションに縛られないメッシは右サイドを空けて自由にポジションを取りますが、そのカバーを豊富な運動量でこなしているのがラキティッチです。

アルゼンチン代表とバルセロナの違い。なぜメッシはアルゼンチン代表だと輝けず、バルセロナでは輝き続けるのか。その違いこそがこの試合で見れた「依存度」だと思っています。

昨年、失速するメッシのプレーが随分批判されていました。事実メッシの輝きは全盛期と比べると幾分失いつつあったと思います。

それと比例してあがっていったのはバルサのメッシへの依存度です。悪い意味で絶対的になりすぎていった結果、アルゼンチン代表のメッシに近づいて行ったように思えます。

「MSN」の中でも飛び抜けたゴール数とスーパープレーで目立っているのはメッシです。ただし昨年に比べ、メッシへの依存度は下がっています。今季はメッシだけでは無く、ネイマールも危険ですし、何よりも新加入のスアレスはもはや完全に本来のゴールハンターの姿になっています。エゴイストに見えて実はメッシを活かすべく動き、ゴールゲッターの役割もこなす。彼の加入なくしては世界最強の3トップ完成は無かった。最高の最後のワンピースだったんじゃないでしょうか?


「MSN」のいるバルサに無傷で済むクラブはないでしょう。このバルサを倒すには殴り合うしかない。だから勇気あるリスキーな変則3バックでのぞんだペップは正しかったと思います。

ただし、この試合のバイエルンには殴り合う拳のパンチ力が足りませんでした。しかも左右に。

ロッベン、そしてリベリー。このうちの1人でもいれば、そしてその1人がメッシサイドに構えていれば、ここまでのワンサイドにならなかったのではないかと思います。

本当にお互いベストメンバーでの決戦を観てみたかったです。

基本的に「攻撃は最大の防御」を地で行くバイエルンにとって、その攻撃力で押し切れなかったのが、後半のあの魔の15分につながっていると思っています。

今季のバルサは非常にバランスが良く、そのバルサが2ndレグで大量失点を食らう、というのが正直イメージできません。

ただバイエルンはここまでホームで全勝。しかも5得点以上の試合も3試合あります。絶対的な強さをホームでみせているチームです。

しかもクライフイズムの正統後継者であるグアルディオラがあの名言「負ける時は美しく」を知らないはずがありません。

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間違いなくグアルディオラは大博打を打ってくるはずです。3-0を達成するかもしれないけど、0-5で散る可能性もあるような、それこそあの変則3バックを90分やってくるかもしれません。

怪我人は仕方ありません。サッカーとは非常に運の支配する領域が大きい競技です。人智のおよばない事も多くあります。僕が観たいのは、絶体絶命に追い詰められたペップが貫く信念。その意思です。

それは運に左右される事もある「結果」よりも美しいもの。僕がペップを大好きな最大の理由、「理想主義」をどんな形で魅せてくれるのか、僕はその1点だけでもこの試合を観る意義があると思います。

サッカーの、いやスポーツの神様は「理想主義者」にけっこう微笑むものです。僕がスポーツを観戦する最大の動機、ありえない奇跡を目撃できるとしたらこの試合ですよ!

「バイエルン×バルセロナ」は12日27時30分キックオフです。もちろん「De La FOOTBALL LIVE!」で生放送します!なんでも当日は台風が直撃するかもしれないという事ですが、そういう時ですよ、とんでもない事が起きる時って!

会場は栄のクラブ「imiri(イミリ)」&「エンポリアム」!(ココ→http://delafootball.wix.com/delafootballlive

なんか最後は勢い余ってめちゃくちゃな感じになりましたけど、いよいよCLファイナルが決まる2試合ですからこんな感じになるのもいたしかたありません(笑)。平日深夜、しかも火曜は台風直撃の脅威もある中で、「すごい物を生で観た」とみなさんと思えたらいいなと思っています。

そんな訳で会場で待っています!台風直撃が過ぎてイベント中止にならない限りは!

それもそれでちょっとした「奇跡」ですけどね(笑)ではでは~


※5月12日(火)の De La FOOTBALL LIVE! バルセロナvsバイエルン 2ndleg は台風の影響により中止となりました。ご了承ください。

なお、13日のレアル・マドリード vs ユベントス、こちらは通常通り開催予定です。

当イベントもこれで残り2回となりました。

世界最高峰のフットボールをぜひ生で、最高の雰囲気でお楽しみください!





今日明日イベント!「CLセミファイナルプレビュー」 

itch の Football goes on vol.105

「CLセミファイナルプレビュー」

フットピーポーよ!いよいよ第7回8回のGWスペシャル 「De La FOOTBALL LIVE!」が開催されます!というわけでCLセミファイナルのプレビューです!

まずは5日27時30分キックオフ「ユベントス×レアルマドリード」から。まずこの1戦ですが、怪我人が続出でベストオーダーが組めないというのが両チーム共通の悩みです。


レアルはベンゼマ、モドリッチが欠場。
ベイルはベンチ入りするのがやっとでスタメン出場は厳しいという状況。。

ユーベはアサモア、カサレス、そして一番痛いのがポグバがおそらく間に合わないという状況です。


怪我人などベストオーダーが組めない時に問われるのは選手層の厚さ。その点では多くのスター選手を抱えるレアルの方が有利です。

ただ、選手の個の能力に依存せず、組織力でここまで勝ち進んできたのが今季のユベントス。テベスにもピルロにも、例外なくハードワークをさせて相手チームを“破壊”する、強烈なチームをアレグリは作りあげてきました。

今季のユーベはアトレチコとドルトムントを足して2で割ったようなチームになっています。ハードなプレッシングも、どっしり引いて守る事も高いレベルで実行ができ、テベス、モラタの鋭いカウンターも驚異です。

非常に負けにくいチーム。抜群の安定感でセリエAを独走し、先週末には早くも今季のスクデットを獲得しました。

レアルにはクォーターファイナルでのアトレチコとの1戦と同じ課題が突き付けられます。「いかに相手チームの固い守備を崩すのか?」です。


ユベントスというイタリアの伝統の力を誰よりも知っているのが、監督を務めたこともあるアンチェロッティです。ベストオーダーが組めない中で、アンチェロッティがどのようにアウェイの1戦に挑むのか、そのあたりに注目してこの1戦を解説したいと思います!


さて、6日27時30分からは「バルセロナ×バイエルン」です。世界中のサッカーファンが待ち望んでいたカードが、ついに実現する時がやってきました!


バイエルンの監督としてグアルディオラがついにカンプ・ノウに帰ってくる。今ごろスペインは大変な騒ぎになっている事でしょう。

個人的に僕も待ち望んでいたカードでした。「バルセロナだからできるサッカーだ」とその完璧なサッカーにケチをつけられ、そうではない事をドイツでも証明してみせたペップがカンプ・ノウに乗り込んでくる。まるで漫画のようなストーリーですよ。

ペップがバルセロナで行っていたサッカーはあまりに革新的過ぎました。基本的にペップしかできないサッカーと言ってもいいでしょう。

ペップバルサのサッカーは数多くのフォロワーを生み出すだけに留まらず、サッカーを変えてしまいました。デルボスケのスペイン代表、レーブのドイツ代表、近年結果を出したチームの根底に流れているのはペップバルサイズムです。

後任のビラノバ、マルティーノ、エンリケはジョゼップ・グアルディオラの幻影と比較される宿命にあります。あの伝説のチームと。ペップのアシスタントコーチであったビラノバはまだしも、マルティーノあたりからバルセロナのサッカーは「保守化」したと僕は観ています。

現在のエンリケバルサのサッカーとは極端に言えばペップのバルサにあったリスクを消したサッカーだと思います。ただしそれは同時に得られていたメリットも消えてしまったサッカーです。

それに対して遠く離れたドイツのバイエルンミュンヘンというチームで、バルセロナイズムをより革新的に推し進めたのが現在のペップバイエルンです。

フォーメーションという考え方を置き去りにするかのような布陣。ポゼッションという考え方をボールからゲーム全体にまで拡大させた「ゲームポゼッション」という考え方。ペップはバルサ以上に過激なサッカーをバイエルンで行っています。

つまりこの1戦はペップが魅せた「伝説のバルセロナ」の、2種類のバージョンアップチームの対決といえる訳です。

システムを保守的にして安定化させたバージョンと、不安定ながらもより革新的なシステムを採用したバージョン。ウインドウズとマック、まるでそんな対決です。

チャレンジャーはバイエルンです。勝利以上の何かを成し遂げようとしているのはバイエルン。そんなロマンチックなことはしなくても、確実に自分たちの力を出して勝つ。強者の王道である保守的な方法論を採用しているバルサ。

背景、歴史、そして価値観、すべてが絡み合った大きな1戦だと思います。惜しいのはこの重大な1戦を、バイエルンはベストメンバーでのぞめないという所です。

ロッベンとリベリー、いわゆる「ロッベリー」のヨーロッパを代表する両翼コンビが揃って欠場!これは痛すぎます!さらに不動の左サイドバックアラバ、高いディフェンスラインに欠かせないバードシュトゥーバーも怪我、もはや別チームといってもいいほどです。

個の力では現在のバルセロナと比べようもないほどです。チームの総合力での勝負に持ち込めなければ、バイエルンに勝ち目は無いでしょう。つまり、監督ペップの手腕がいつも以上に期待される試合と言えます。

はたしてこの絶対絶命の状況で、現代サッカーの理想主義者ジョゼップ・グアルディオラがどのようなサッカーを見せるのか。そこに注目してこの1戦にのぞみたいと思います。

GWも後半、今年のGWの総仕上げに相応しい2試合となりました。パーティーに相応しい2戦だと思います。そんな訳で今夜と明日の夜は「De La FOOTBALL LIVE!」でワッサと盛り上がりましょう!


会場は栄のクラブ「エンポリアム」!割引キャンペーンも行っているので詳しくはイベントHPをチェック!(ココ→http://delafootball.wix.com/delafootballlive

さあ今夜はフットボールパーティー!というわけで会場で待っています!GWの最後をチャンピオンズリーグビューイングパーティーで楽しみましょう!それでは!

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「ペップマジックならぬペップ“ロジック”」本編 

itch の Football goes on vol.103(本編)

CLクォーターファイナル2ndレグレビュー
「ペップマジックならぬペップ“ロジック”」


フットピーポーよ!ここからが本題です!


前回も書きましたが、試合前の僕の注目点はペップが1stレグで猛威をふるったポルトの高い位置からのハイプレスにどう対応するのか、でした。ペップはそれについて2つのポイントを修正してきました。

まず前回定番の4-1-2-3だったフォーメーションを、4-2-3-1に修正してきました。前回プレッシングの狙い撃ちにあっていたピポーテのシャビアロンソのそばに、チアゴ・アルカンタラを配置。ダブルボランチ、というより「ダブル・ピポーテ」の構えです。

当日の実況でも解説しましたがポルトのフォーメーションは4-1-2-3。その中盤とスリートップ「2-3」の5人で前がかりにプレッシングを行い、バイエルンの低い位置でのパス回しを制限したのがうまくいっていたのが1stレグです。

バイエルンは1stレグでは4-1-2-3でした。低い位置でのパス回しでボールを受ける「4-1」の5人に対し、ポルトは「2-3」の同じく5人でプレスをかける。数的同数であり、中央の「4-1」の「1」であるシャビ・アロンソと、「2-3」の「2」であるエレーラ、オリベル・トーレスのマッチアップでは数的有利。シャビ・アロンソは即座に囲まれ、苦し紛れのパスはことごとくカットされる。ポルトのプレスがビシビシ決まっていました。

ペップの考えはシンプルでした。シャビ・アロンソに代え競り負けないフィジカルタイプを入れるのではなく、あくまでパス回しの要員を増やす。ピポーテが1人だったからプレスを受けた、じゃあピポーテを二人にしよう。この人は決してロングボールで中盤省略、なんて考えません。あくまでマイボールありき。「ボールは友達」を地で行く人です。

じゃあポルトはより前がかりに、アンカーのカゼミロもプレス要員に加えればいいはずです。それに対しての対策がペップのもうひとつの手、試合前のトークライブで注目ポイントにあげたラームの位置です。

この試合でペップはラームを4-2-「3」-1の「3」の右。サイドアタッカーの位置に入れてきました。

1stレグでバイエルンが苦戦した原因のもうひとつは、攻撃の幅の無さだと思っていました。ロッベン、リベリーの両翼を失っていたバイエルンはゲッツェとミュラーにその代役を任せましたが、この両者はそもそもサイドが本職ではありません。両者は中央にポジションし、1stレグでのバイエルンの攻撃は中央に偏っていました。

中央とは選手が密集し、それがゆえに360度全方位からプレッシャー受けるエリアです。ところがタッチラインがあるサイドはその半分180度の世界。おまけに中央ほど選手は密集していません。

「ボールの避難所」ともいえるサイド。そこを1stレグのバイエルンは使えていなかった。ポルトのプレッシングの網に必要以上に引っかかったのはそのためです。

しかし2ndレグではその「ボールの避難所」にペップはラームを配置してきました。ラームは最近ではすっかり中盤の選手が板についてきましたが、もともと世界一の右サイドバックと呼ばれた選手です。その選手が右サイドの高い位置にポジションしている。

バイエルンからみて右サイドの高い位置、それはポルトからみると4-1-2-3の泣き所であるアンカーの脇。さらに言うとおそらくペップに散々注意されたのでしょう、逆サイドのゲッツェもこの試合序盤では左サイドの高い位置をしっかりキープしていました。ポルトのアンカーであるカゼミロは常にその両サイドのカバーが突きつけられていたんです。前線のプレスに参加したくてもいけない状況が。。

ポルトの前線は試合開始から1stレグと同じようなプレッシングをしかけようとしました。しかし下がってきたチアゴとシャビアロンソのダブルピポーテにパスを回され、食らいつきすぎればアンカー脇のラームとゲッツェにボールを入れられてしまう。ポルトの両ウイングはそのケアの為に高い位置をキープできず、ダブルピポーテのパス回しにバイエルンの両サイドバックも自由に参加しだす。ボールをキープできるバイエルンのディフェンスラインは高く押し上げられ、選手達の距離感はショートパスを回すのに最適に。そしてプレスはますます空転していく…

ロペテギにまんまとやられた1stレグに対する、ペップの完璧な解答でした。

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混乱するポルトを相手に前半のうちに5ゴール。勝負は決着しました。
しかしそこからの後半のロペテギの意地も見事でした。

中盤で構造的に数的不利の状況を作られている事を察知したロペテギは、3バックにして中盤を厚くし、プレッシングを強化。パス回しを制限し、時にはカットをして何度かチャンスを演出しましたね。

それに対してペップもすぐさまに3バックで対応。するとロペテギも中盤の構成を変化させ対応。するとペップもそれに合わせてすぐさま動く。

ロペテギとグアルディオラ、バルサの遺伝子を持つ二人がドイツとポルトガルのチームを率いて、ヨーロッパの晴れ舞台で戦術合戦。テクニカルエリア最前線でズボンが裂けるほど身振り手振りでポジション指示をするペップ。同じく髪を振り乱して何とか一矢むくいようとするロペテギ。勝負は決したものの後半のあの感じもまた密度が濃く、本当に面白い1試合でした。いまんとこ今季CLのベストバウトです。

それにしても驚くのはラームの万能性です。ラームはこの試合を右サイドアタッカーで始め、右ウイングバック、ボランチ、最後はインサイドミッドフィルダーとめまぐるしくポジションを代えていました。

ラームはペップが選手交代を行うたびにポジションを代えました。1つの交代でピッチでは2つ以上の変化を巻き起こすいわゆる「戦術的交代」ってやつですね。忘れがちですけどラームってもともと不動の右サイドバックだったんですよ。彼の中にユーティリティー性を見て、それを引きだし、自らのピッチでの分身として使い倒す。これもまたグアルディオラの凄みです。

とにかく濃い試合で当日はほぼ喋りっぱなしでした(笑)。その内容を文章にまとめてみましたが、やはりとんでもない事になってしまいました(笑)んがしかし!一部に長くてもついてきて読んでくれる方がいると知った今、今回は遠慮なく書きました!だってそういう一戦だったんですから!

チャンピオンズリーグを見逃せないのはこういう試合があるからです。サッカーという競技の奥深さと可能性を見せつけられる大会。観ていないと置き去りにされる、やっぱり世界でもっとも最先端の試合が行われる大会なんだと、まざまざと思い知らされた一戦でした。


さあいよいよCLもベスト4にしぼられてまいりました。レアル、ユーベ、バイエルン、バルサ。文句の無いヨーロッパを代表する強豪たちでいよいよ決勝の舞台をかけた決戦が行われます。


その注目の1stレグの開催ですが、これがナイスタイミングなことに日本ではGW中じゃありませんか!普段はド平日の27時30分キックオフという厳しい条件も、次の日お休みならばノープロブレム!

フットボールビューイングパーティー「De La FOOTBALL LIVE!」はもちろん5月5日27時30分キックオフ「ユベントス×レアルマドリード」、そして全世界が2年間待っていたビックマッチ6日27時30分キックオフ「バルセロナ×バイエルン」を放映します!

このビックマッチを録画して自分の家で観るなんてもったいない!しかも5日、6日はGWスペシャルということで栄のあの「エンポリアム」とタイアップ!試合開始まではガンガンのクラブサウンドで盛り上がりつつ、27時からはチャンピオンズリーグセミファイナルを観戦できるというスペシャルプログラムです!

ここまで7回の開催を終わり、ようやく試合観ながらしゃべる事にも慣れてきたました。特に「バルサ×バイエルン」なんて「もう黙っていてくれ!」「帰れ!」って言われるほど喋っちゃうことでしょう(笑)入場割引キャンペーンもやってますんで、詳しくはイベントHPをチェック!(ココ→http://delafootball.wix.com/delafootballlive

そんな訳で次回はイベント開催直前プレビューを行います、ここまで殺人的長文にお付き合いしてくれた方、お疲れ様でした!そんなアナタなら深夜キックオフ&お喋り攻めにも耐えれるはずです(笑)GWはエンポリで待ちかまえていますから、フットピーポーは全員集合でオナシャス!

ではでは~

「ペップマジックならぬペップ“ロジック”」まえがき 

itch の Football goes on vol.103(まえがき)

CLクォーターファイナル2ndレグレビュー
「ペップマジックならぬペップ“ロジック”」

フットピーポーよ!第5回6回の 「De La FOOTBALL LIVE!」が終了!


急遽放映した「バイエルン×ポルト」、注目のマドリードダービー「レアル・マドリード×アトレチコ・マドリード」それぞれ凄い試合でしたね!

今季8度目の対戦にしてついに勝利をしたレアル。アトレチコはアルダの退場が痛かったですね。数的不利からさらに守りを固めたアトレチコ。延長突入の気配がただよってきた後半終了間際に、試合を決めたのがチチャリートことハビエル・エルナンデスでした。


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ユナイテッドから出場機会を求めて移籍を決意したものの選んだクラブはレアル。変わらず出場機会を得られなかったチチャが、自らの存在を証明する仕事をやってのけましたね。


ただ敗者のアトレチコも称えたいと思います。レアルとの予算差は4倍強。毎年のように主力を引き抜かれ、今季はジエゴ・コスタ、クルトワ、フェリペをまとめてチェルシーがお買い上げ。それにもかかわらず今季もCLベスト8の舞台まで生き残ったことは偉業でしょう。

就任するや負け犬根性を払拭させ、闘争のメンタリティーを注入した監督シメオネの手腕はもはや疑いの無いものに思います。アトレチコはシメオネと監督の契約としては異例の5年という長期契約を結びましたが、はたしてシメオネがいつまでアトレチコにいるのか。個人的にはイタリアのクラブがもっとも合うと思うんですけどねえ...


さて、今回力一杯力説したいのが「バイエルン×ポルト」です。いやあ凄い試合でした!


バイエルンは1stレグで3-1の敗戦をくらい、勝ち抜けるためには3点差以上の勝利が必要という厳しい条件でした。

しかも1stレグでの負け方が悪かった。ポルトの高い位置からのハイプレスにモロにハマり、得意のパス回しを封じられて前半10分で2失点!元バルサにしてスペイン代表でもペップとチームメート、敵将ロペテギに完璧にしてやられた1stレグでした。

それが終わってみれば6-1というワンサイドスコアです。

一体何が起きたんでしょうか?

振り返ってみましょう。。。


(本編へ続くww)


itchコラム Football goes on vol.103 

フットピーポーよ!第3回4回の 「De La FOOTBALL LIVE!」が終わりました!

放映した14日「アトレチコマドリー×レアルマドリー」、15日「パリ・サンジェルマン×バルセロナ」それぞれ凄い試合でした!

まず「アトレチコマドリー×レアルマドリー」ですが予想通り緊迫したまさに死闘でしたね。
激しくファイトして時間の経過とともにバンソウコウが増えていくマンジュキッチの顔面状況が象徴的でした(笑)

試合は攻めるレアル、耐えて反撃をうかがうアトレチコの構図。その行く末は0-0のスコアレスドロー。対レアル今季6戦負けなしのアトレチコはその記録を7戦にのばしました。

ここまで勝てていないレアルはなにか工夫してくるはず。事前トークライブで「レアルはカウンターを狙うのでは?」と予想しましたが、今までの攻撃で崩せないなら、より攻撃のギアをあげるまでと、より攻撃的にアトレチコに挑んだのは予想外でした。

アトレチコはその攻撃の圧力に押しこめられ、これまでの対レアルの必勝パターン「堅守速攻」の「速攻」の鋭さが鈍りました。攻撃こそ最大の防御と言わんばかりのレアルの試合運びは見事でした。今季の対戦の中でも最もアトレチコを追い詰めていたと思います。

それと印象的だったのは両監督が70分過ぎまでほぼ動かなかったことです。0-0という膠着だったにもかかわらず、です。これでオッケー。勝負は2ndレグ。そんな思惑が一致していました。

その2ndレグですが難しいのはレアルです。1stレグ同様にいやそれ以上にホームの地の利を活かしてより攻撃的に押していきたいところですが、この1戦ではアウェイゴールの恐怖がセットになるわけです。

アトレチコはやることは一緒です。耐えて一撃のカウンターに賭ける。その迷いの無さが逆にレアルは恐ろしいのでは...。

バランスと自制を求められるのはレアルです。さらには直前のリーグ戦で「BBC」の一画のベイル、トークライブで注目選手にあげたモドリッチが負傷!主力の2名を欠くレアル、はたしてアンチェロッティがどのようにこの試合を考えるのか。その辺を中心にこの大一番を観ていきたいと思います!

「レアルマドリード×アトレチコマドリード」は22日27:30キックオフ!もちろん「De La FOOTBALL LIVE!」でLIVE中継を行います!


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さて15日の「パリ・サンジェルマン×バルセロナ」ですがこちらは衝撃的な内容になってしまいましたね。

僕はこの1戦の直前のトークライブで、ホームとはいえ出場停止や怪我でズラタンをはじめとする主力選手を欠く事から、守備的にならざるをえないパリの注目選手にチアゴ・シウバをあげていたんですけど、まさかその主将すら20分足らずで失うとは…

パリは余りに巡り合わせが悪すぎました。そして今季の「現実的なバルセロナ」これが実に強い!

3ゴール全て無駄なパスの無い速攻です。最大の強み前線の3トップ「MSN」に、スペースも時間もあるうちにボールをあずけて勝負をさせるスタイルが、ここにきて完成しつつあります。特にここ最近絶好調でゴールを量産しているスアレスが素晴らしいです。

スアレスはインタビューで「加入直後はエゴイストだと思われないように意識的にアシストに徹していた」と語っています。スアレスがゴールの少なさを叩かれていた昨年末あたりの話です。

無理もありません。噛みつき野郎、半年の出場停止、高額の年棒、それなのにいきなり俺にボールをよこせ!なんてやっていたら間違いなくかつてのズラタンのようにハブられていたでしょう(笑)

それが時間の経過とともにチームに馴染みだし、今年に入ってから彼の本来の姿、天性のゴールゲッターの姿がついに出だしました。

そして危険なスアレスが中央で相手DFを引き付ければ引き付けるほど、輝きを増しだしたのが外で構えるメッシです。

前半戦はメッシとネイマールだけだった連携が、そこにスアレスが絡みだして手がつけられない状態になっているのが今の「MSN」です。今現在、世界で最強の3トップがこの3人だと思います!


そのスアレスの大暴れにより、パリは回復不可能なアウェイゴール3点を食らってしまいました。王様イブラが帰ってくる2ndレグも時すでに遅し。「現実的なバルサ」から無傷で3点を取るのは非常に難しいと思います。サッカーとはやってみなければ何が起こるか分からないものですが、それでもほぼこの試合は決まりでしょう。


そこで!21日深夜の放送予定ですが変更です!その裏カードでこちらも衝撃的な内容だった「ポルト×バイエルン」の2ndレグの方を放送します!(笑)


リベリー、ロッベンの両翼を失ったバイエルンに対していちかばちかの前がかりのプレッシングを敢行し、狙い通りの「前陣速攻」から3点を取り3-1のスコアで勝利したポルト。監督のロペテギを褒め称えたいです。

ロペテギは現役時代にグアルディオラとチームメートだった元バルセロナのプレーヤーです。その後もスペインのユース世代を率いてユースのユーロ大会を制覇していたりする、スペインの若き名将です。

つまりバルセロナの哲学を体現するグアルディオラのサッカーを、ロペテギは充分に知り尽くしていた訳です。その強さと、そしてウィークポイントを。

ロペテギが徹底的に狙ったのはピポーテのシャビ・アロンソでした。スペイン語で「軸」を意味するこのポジションこそ、バルセロナの哲学、つまりグアルディオラサッカーの文字通り「軸」である事をロペテギはもちろん知っていました。

バイエルンの攻撃の第一歩はピポーテのシャビ・アロンソから始まります。もっと言うとセンターバックの二人からシャビ・アロンソにボールが渡されてそこから攻撃が開始します。

ロペテギはこの日のセンターバックであるダンチ、ボアテング、そしてシャビ・アロンソで形成されるトライアングルに対して、3トップとトップ下の4人で徹底的に前からプレッシングをかけました。これが完璧に機能したんです。

その結果、シャビ・アロンソとダンチから立て続けにボールを奪い去り、前半の10分間で2点を決める事に成功。その後もシャビ・アロンソにゲームメイクさせる事をせず、バイエルンの攻撃を機能不全に追い込むことに成功しました。

ただしバイエルンは一矢むくいています。貴重なアウェイゴールをどうにか1点奪っています。迎える2ndレグはこの1点が勝負を分けそうです。

ロッベン、リベリーという絶対的な選手がいないだけに、グアルディオラに求められる要素は大きいです。敵は自らの哲学を知りぬく知将。はたしてロペテギの次の一手は何か?


ここ一番でグアルディオラはメッシの0トップなど大胆な戦術を仕掛けてくることもいとわない人物です。

21日「バイエルン×ポルト」は戦術家同士の駆け引きが楽しめそうです!こちらの試合を21日27:00から「De La FOOT BALL LIVE!」で放映いたします!


いやあ2試合とも完全に「すべらない試合」ですよ!はたしてヨーロッパ4強へ生き残るのはどのチームなのか?ド平日深夜とはいえ、これは生で観るしかないでしょう!そんな訳で会場で待ってますよ!

詳しくはイベントHPをチェック!ココ→http://delafootball.wix.com/delafootballlive

それでは平日深夜ツーデイズに控えて、今日はこの辺で!ではでは~

「De La FOOTBALL LIVE!プレビュー」fgo vol.102 

Football goes on vol.102

「De La FOOTBALL LIVE!プレビュー」


フットピーポーよ!さあチャンピオンズリーグクォーターファイナルの第一節が今週ミッドウィークに行われます!

と、いうことは!そう!DLIVEプレゼンツの新感覚フットボールビューイングイベント「De La FOOTBALL LIVE!」が14日、15日の驚異のツーデイズでまたもや開催されるんです!

平日ド深夜に!2日連続で!はははは!

というわけで今回は来たるべきCLクォーターファイナルの、「De La FOOTBALL LIVE!」でメイン放送する14日「アトレチコ・マドリー×レアルマドリード」、15日「パリ・サンジェルマン×バルセロナ」のプレビューを書いていきたいと思います。

と、言いつつも、ただでさえクソ長いブログなのにそんな濃い試合2試合のプレビューを書こうもんならもはや誰も読まなくなる長さになると思うし、何より当日喋る事が無くなってしまうので、今回は「ここに注目するとこの2試合は面白い!」ってポイントに絞って進めます!


まず14日の「アトレチコ・マドリー×レアルマドリード」について。


ここの僕の注目ポイントは「どーすんだアンチェロッティ?」です。今季レアルマドリードの対アトレチコの成績ですが、なんと圧巻の2分4敗!1勝もできていない状況が続いています。

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直近の2月にカルデロンで行われたリーガでもレアルは4-0で完膚なきまでに叩き潰されています。この組み合わせは昨年のCLファイナルの再来ですが、思えば昨年もロスタイムにセルヒオ・ラモスが同点弾を決めるまで、90分間試合を支配していたのはアトレチコ。かつては「お得意様」だった同じ街の隣人との関係は、いまや完全に「天敵」に変化しています。

昨年CL10冠の偉業を達成したレアルが苦にしたのは、優勝候補のバイエルンでも、前年ファイナリストのドルトムントでも、かつてのライバルであったユベントスでもなく、アトレチコだったんです。

その変化は何をおいてもあのシメオネの監督就任が機でした。予算規模は実に4倍以上。世界のスーパースター達が集結する、いまなお「銀河系集団」のレアルが、アトレチコを前にするとまるでヘビに睨まれたカエルのようになってしまう。

4-4のツーラインをバイタルエリアの前にガッチリ作り、そこに入り込んでくる相手に猛烈なプレッシングをかけてボールを奪い去る。奪うやいなやその勢いのままに、相手ゴールへ殺到する。文章にすれば実にシンプルなアトレチコのサッカーは、対レアルではさらに凄みが増します。まるで「こいつらに一泡吹かせる事が俺たちの最大の悦び」と言わんばかりに。

レアルのやられるパターンはだいたい一緒です。固い守備をこじあける為に人数をかけたところを逆襲される。ポゼッションが増えたとはいえ、本質はカウンターであるレアルにとって、長所は完全に消され、ウィークポイントを徹底的に突いてくる実にいやな相手、それがアトレチコなんです。

今季一度も勝てていない相手にこれまでと同じ方法論でぶつかっても、やはり同じ結果がでるだけ。ましてや2月の4-0の敗戦は壊滅的でした。はたしてアンチェロッティはアゥエイの1stレグでどのような布陣と戦術でこの天敵を迎えるのか?

一方シメオネはそのレアルに対してどのように試合を進めるのか?そこに注目して当日はこの大一番を解説していきたいと思います!

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さて、15日の「パリ・サンジェルマン×バルセロナ」ですがこちらは「ヨーロッパ最強3トップMSNをどう抑えるか」に注目したいです。

かなり際どい判定でレッドを食らった影響で、パリの王様であるズラタンがこの1戦はサスペンドで出られません。そうなった以上、もはやパリの狙いはハッキリしています。

「耐える1戦」です。

王様が復活する2ndレグこそ本当の勝負。この1戦はダメージを最小限にできるかどうかが、パリのテーマでしょう。その為には絶好調の「MSN」を沈黙させる必要があります。

シティはあまりに無策でした。
懐かしいフレーズですが「自分たちのサッカー」をしようとするがあまり、「MSN」にほぼ無制限のプレーを許してしまってあの結果です。

しかし王様無きパリには、そもそもが「自分たちのサッカー」の主役がいないわけで、「相手たちのサッカー」に合わせた試合運びを選ばざるをえません。

「相手たちのサッカー」つまりバルセロナのサッカーとはもはやポゼッションではありません。今季バルサのサッカーとは「MSN」を最大限に活かす、です。ではパリはそれにどうやって対応するのか。

それに対して「現実的なバルセロナ」という新たな姿を見せている監督ルイス・エンリケはどのように手を打つのか。そこに注目して解説していきたいと考えています。


いま、そこで、なにが起こっているのか。


LIVEだけにヒントは画面で起こっている事のみ。それを画面から推理しながら、その場にいるみなさんと共有しながら謎解きをしていければ楽しいなあなんて考えています。

平日の深夜にも関わらず、やっぱり生で観たいでしょ!というサッカー馬鹿の人達、会場で待っていますよ!


会場の音響はほんと最高なんで、怒号のようなビセンテ・カルデロンのスタジアム環境音をあの音響システムで浴びれると思うと、それだけでちょっとワクワクしています。

詳しくはイベントHPをチェック!ココ→http://delafootball.wix.com/delafootballlive

それでは平日深夜ツーデイズに控えて、今日はこの辺で寝ます!(笑)

それでは会場で!ではでは~

「ハリルジャパンレビュー『代表のオープン化』」fgo vol.101 

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「ハリルジャパンレビュー『代表のオープン化』」


フットピーポーよ!ドラゴンズの7連勝にうかれてて少し遅くなりましたが、今回は先週行われたハリルジャパン二戦目のレビュー、2試合を通してみえた「監督ハリルホジッチとは?」について書いていきます!


前回ブログでテストの側面が強かった一戦目、はたして2戦目のメンバーは?と書きましたが注目のスタメン、その構成が面白かったです。


本田、香川、岡崎、前線には現在の代表の顔ともいえる名前がスタメンに並ぶ一方、中盤から後ろは初代表の昌子をはじめ、チャレンジングなスタメンだったと思います。

チェニジア戦の前半で速攻が機能せず、交代で本田、香川、岡崎が入ってからようやく攻撃の形ができた事からか、第二戦では初めから起用してきましたね。

しかしこの試合ではその前半の方がチームが機能しませんでしたね。原因は新たなメンバーが名前を連ねるディフェンス陣にありました。それは当日の解説でもしゃべりましたがJリーガーセンターバック二人の守備に対する考え方の古さにあります。

サッカーにおいて守備とは元来「防ぐ」という行為でした。しかし90年代初頭、その概念を覆す革命的な戦術がイタリアで誕生します。

それがプレッシングです。当時セリエCのパルマの監督をしていたアリゴ・サッキは全く新たな戦術プレッシングを武器にジャイアントキリングを連発。抜擢されたミランでもそのプレッシングは猛威をふるい、ヨーロッパのあらゆるタイトルを総なめ。唯一、チャンピオンズリーグ(当時の名前はチャンピオンズカップ)の連覇を成し遂げたのもサッキのミランです。

サッキのプレッシング戦術は議論をよびました。なぜならプレッシングは基本的に守備時の戦術ですが、サッキのミランはそれまでの安全第一の守備戦術「カテナチオ」とまるで違う。さらにサッキのミランのウリは攻撃力。高い位置で奪うやいなやファンバステン、フリット、ライカールトの「オランダトリオ」が破壊的な攻撃をしかけるのが特徴だったからです。

それまでの後ろを固める「カテナチオ」と180度違う、ボールホルダーに激しく詰め寄りボールを奪う「プレッシング」。これははたして本当に守備戦術なのか。

その議論からプレッシングはいつしかこう呼ばれるようになります。「攻撃的守備」と。

アタッキングディフェンス。ただ後方に待機して防ぐという受動的な行為ではなく、ボールホルダーに「アタック」して、ボールを「奪う」能動的な守備とでも言いましょうか。

ただしプレッシングにはリスクがつきもの。失敗すれば即GKとの1対1が生まれてしまうディフェンス方法でもありました。そんな事からイタリアでは安全と思われる「カテナチオ」への回帰が始まってしまいます。

ただ、その安全と思われていた「カテナチオ」は実は安全では無かったんです。バルサをリーダーとする進化する攻撃的サッカーを前に、もはやゴール前を固める戦術では勝てなくなります。

「カテナチオへの回帰」とともに、セリエAのイタリア陣営はヨーロッパのトップから転落していきます。

選手たちのアスリート化、個人ではなく組織的にしかける攻撃を前に、もはや後ろを固めても守れない。そして何より、攻撃的サッカーと「攻撃的守備」プレッシングは相性がバツグン。本家イタリアが手放したプレッシングは2000年代急速にヨーロッパに広まります。

そして迎える現在、サッカーの最先端であるヨーロッパで行われている状況はついに「プレッシング合戦」になった。おおまかですが世界の守備戦術の流れです。簡単に言えば「ボールの奪い合い」。これが今のヨーロッパで行われていることです。

その流れに残念ながらのっていないのがアジアです。実は南米も乗り遅れていました。しかしブラジルワールドカップでは見事に南米チームはプレッシング化していましたね。それでも最後はヨーロッパサッカーの権化ともいえるドイツに優勝はさらわれましたが。。

すさまじい長さの前置きになりましたが(笑)、その視点でウズベキスタン戦のディフェンスを見ると、やはりまだまだ「カテナチオ」的なディフェンス概念に、特にJリーガーが囚われているのが目立ちました。

ボールホルダーに対して間合いを取ってズルズルと後退してしまう。結果ディフェンスラインは下がり、バイタルエリアには広大なスペースが広がり、プレスがかからない。

青山のスーパーボレーで先制しながらも、ペースはがっちりウズベキスタンに握られたのはそのため。どちらかと言えばウズベキスタンの方がモダンなサッカーをやっていましたね。「リードしている」という意識から余計に前半の日本のディフェンスは深すぎました。

前半は「速攻」が機能しなかったという側面も考えなければいけません。

「堅守速攻」とは文字通り「堅守」と「速攻」がセットになっています。「堅守」だけオッケー、「速攻」がイマイチ。それではダメなんです。それは古い「カテナチオ」型思考です。「速攻」の為の「堅守」。攻撃から逆算される守備が現代的な「堅守速攻」です。


前半の日本が悪かったのは守備が安定しなかったから、そこから仕掛けられる攻撃の精度もおのずと悪くなっていました。

さらに「速攻」への考え方の古さも目立ちました。「速攻」とは即ロングボール。まるでクリアのようなロングボールが前線目がけて放り込まれるシーンが目立ちました。

「速攻」とはなにもロングボールだけじゃありません。むしろヨーロッパの速攻のメインはショートパスです。精度の高いショートパスで速攻を仕掛ける。それには相手の陣形が崩れてマークがずれていなければいけません。

相手の陣形が崩れている瞬間とは、ボールを奪った瞬間です。制度の悪いロングボールではなくショートパスで、しかも相手ゴールに近い位置からそれを開始したい。

ヨーロッパのほぼ全てのチームがもはや共通事項として狙っているのがそれです。だからこそ現在は「プレッシングの時代」なのです。

ハリルがいい監督だなと思ったのは後半そうそうに今野と水本を代え、日本が前半に抱えていた問題をすぐに修正したところです。

攻撃がうまっくいっていない、じゃあ攻撃の選手を変えよう!ではなくてその原因が守備にあるというところを直ちに修正してくるあたりに感心しました。

水本のアンカーで日本の守備は安定し、バイタルエリアに守備ブロックを形成する事ができました。ボールを前に運べなくなったウズベキスタンに、前線のプレスがハマりだします。

そこからはご存知の通りのゴールラッシュ。宇佐美の彼らしいドリブルシュートも、高い位置でボールを奪ったあとに生まれた事を忘れてはいけません。

ハリルは2試合でフィールドプレーヤーを全員使いました。勝利という結果も出しながら見事なテストです。交代もバッチリ。ピッチに飛び出て激しく指揮を取る感じも悪くないです。どうやら日本はアタリをひいたようですよ。

ハリルはザックとは違い、代表のメンバーを限りなくオープンにしています。次は誰が呼ばれるのか、抜擢されるのか、それはいま行われているJでの活躍次第で誰にでもあり得る話になりました。

今回選ばれた選手は得難い経験を積んだはずです。Jリーグとは違った守備概念、攻撃概念、こうした方がサッカーはうまくいくという理屈。ヨーロッパでプレイする選手の力量。

それをJに持ち帰られるか。ハリルの代表のオープン化はJのレベルアップにつながります。会見でもはっきりとマスコミに訴えるハリルは、うまくいけば日本のサッカーを世界基準に引き上げてくれる人物、昔のトルシエやオシムのような人材かもしれません。

思いのほかいい監督だというのが僕のハリルのイメージでした。しかも彼からは己の信念を貫く哲学のようなものも感じます。周りがなんと言おうと使う選手は使う。そして使わない選手は、使わない。

アジア予選を通じて、そして4年間という時間を使ってどんなチームを作り上げるのか、楽しみな監督が就任してくれました。それが僕の印象です。日本は彼から多くの事を学べそうな、実に現代的な監督だと思いました。それでは!

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「ハリルジャパン初戦レビュー&告知!」fgo vol.100 

itch の Football goes on vol.100

「ハリルジャパン初戦レビュー & イベント告知!」


フットピーポーよ!謎の東欧人ハリルホジッチの初戦がついにお披露目されました。今回は初戦から見えた「ハリルジャパンとは?」というテーマでいきます!


まずは試合後に話題になったあの驚きのスターティングメンバーについて。


アジアカップのスターティングメンバーから7人が入れ替わり、そこには初代表スタメンの選手がズラリ。思い起こすのは昨年のアギーレジャパンでのブラジル戦です。

あのブラジルとW杯後に初めて戦う1戦で、アギーレはみんなが驚く若手主体のメンバーでのぞみました。

本田も長友もいないスターティングメンバーは物議をよびました。「せっかくのブラジル戦なのにベストメンバーでいかないとは何事だ!」という感じで、中には「代表戦はテストの場では無い」という意見もありました。

しかし僕は肯定派でした。たしかに相手は大物ブラジルとはいえ、この1戦はあくまでも「親善試合」。まさに「テストの場」。それが世界のサッカー界では常識です。
 

本田、長友がそのブラジル戦に出たところで、仮に勝ったところで、はたして何が得られるのか。それよりも普段Jリーグで戦い、世界のレベルを肌で感じる機会の無い若者たちに「世界の高み」を体験させる方が得られるものも多いはずです。

ブラジル戦での経験をJリーグに持ち帰れ。僕はアギーレの采配にそんな意図を感じていました。

今回のハリルジャパン初戦のスターティングメンバーからもまったく同じ意図を感じました。しかもハリルは試合後に「次のウズベキスタン戦でも多くの選手をテストする」と明言しています。

代表の本番とはW杯をおいて他にはありえません。そしてW杯は4年周期。つまり代表の強化スケジュールは4年周期で考えるべきです。

4年周期の最初の1年目であるこの時期は「準備期間」であるべきです。戦力の発掘と見極め。メンバーの力を引き出せるフォーメーションと戦術の考察。それらに着手する時期です。まったく「絶対に負けられない」時期ではありません。

ただ今回のメンバー選考にハリルの意思がどれぐらい反映されているのかは疑問が残ります。ハリルの就任からメンバー発表まではほぼ3週間。Jリーグの視察は数試合でした。

おそらく今回の代表選考はサッカー協会の強化委員主導で行われているはずです。そこからハリルが初戦に誰をピックアップしたのか。そこが彼のサッカー観を推し量るポイントになるはずです。


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フォーメーションは4-2-1-3。アギーレジャパンとの違いは中盤の構成。アンカーではなくダブルボランチとトップ下を採用しているので4-2-3-1との中間型といったところで。現在、世界でもっともスタンダードなフォーメーション。特に驚きは無し。

特徴がでたのはメンバー構成でしょう。アジアカップから7人変更と書きましたが、そのうちの4人は控えや代表経験もある選手、本当の意味で抜擢したのは3人です。

川又、永井、藤春、それぞれをワントップ、右ウイング、左サイドバックで使いました。こられ3人に共通しているのは「スピード」だと思います。

ハリルは日本の特徴について「日本人はパワーでは世界にかなわない。だが日本人にはスピードがある」と試合前に語っていましたね。そのスピードを活かすのが日本の道だと。

スピードを活かす。つまり速攻です。相手ゴール前が守備陣で埋まる前に、スピーディーに強襲する。そんなイメージでしょう。

スピードは守備でも使えます。素早くボールホルダーに詰めよるプレッシングです。前半では中盤の高い位置でかなり激しくプレッシングを行っていました。

おそらくハリルが思い描く理想像はドルトムントのような前陣速攻なのでは。前半のメンバー構成と戦い方を観ていて僕はそう思いました。


ただ前半のメンバーはプレッシングまでは良かったものの、ボールを奪ってからの速攻の部分がうまくいっていませんでしたね。

世界ではもはや常識となったプレッシングの中での早いテンポの試合展開に、普段から身を置いている長谷部、清武をセンターラインに保険として置いておいたのはそのためでしょう。前半のメンバーでハリルの求める速いテンポに対応できなかったのは国内組でした。

後半に入り、本田、香川の同時交代あたりから流れが変わりましたね。同じく速いテンポに日常的に身をおく選手達です。そして先制を決めたのは岡崎。

結局のところハリルの求めるサッカーを実践できたのはいつものメンバーでした。

現時点では「やっぱりブラジル組」と思ってしまいがちですが、あくまで代表は4年周期。まだ3年半、次のW杯までは猶予があるわけです。

ハリルは代表の門戸を大きく広げて新たな戦力を積極的に試す様子をみせています。Jリーグで結果を出せば、テストの機会は与えられるはずです。

それに奮起し、Jリーグの激しさやテンポがよりレベルアップし、熾烈な代表争いが行なわれなければいけません。ついにポストシーズン制を導入しないと維持できなくなりつつあるJリーグが、これを機に大いに盛り上がる事を期待します。


はたして火曜日のウズベキスタン戦ではスターティングメンバーに誰の名前があるのか。個人的にはブラジル組と面白い絡みをしていた宇佐美を頭から観てみたいなぁ


そして!そんな今が一番面白い新生日本代表の2戦目ウズベキスタン戦が「De La FOOTBALL LIVE!」で緊急ライブビューイングすることが決まりました!ええ、宣伝ですとも!


今回は深夜27:30キックオフとかじゃなく、ゴールデンタイムの19:30キックオフ!

3月は31日(火)18:00オープン

場所は名古屋栄の「imri(イミリ)」(http://www.imri.co.jp)にて!
詳しくはイベントHPをチェックしてみてください!

(ココ→http://delafootball.wix.com/delafootballlive


当日は試合30分前ぐらいからまたもやトークライブを行います!文章にするとクソ長い量になってしまうことも喋れば数秒、パソコンで書くときにはタイピングが面倒くさいハリルホジッチも、喋れば1秒!ここでは書き尽くせない第一戦のインプレッションと、第二戦のみどころを喋ります!

そんな訳で新しい代表の門出を多くのサッカー好き達と盛り上がって楽しみましょう~それでは会場で!


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「クラシコにみる『MSN』の封じ方」fgo.99 

itch の Football goes on vol.99

「クラシコにみる『MSN』の封じ方」


フットピーポーよ!今週は2本立て!いや、あまりのクソ長さに前編、後編でお届けしたので実質3本立て!ヨーロッパのサッカーシーズンも佳境に入り、こっちもエンジンかかってまいりました!


という訳で今回は前回の「最強MSN」の続き、じゃあそんな「MSN」をどう封じればいいのか?というお話です。

実はそれは僕のオリジナルアイデアでもなんでもありません。先週末のクラシコでレアルが敵地で実行したアイデアなんですけどね。


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カンプ・ノウで絶好調のバルサが、調子を落とすレアルを迎える。戦前の予想は「バルサ有利」という見方が多数だったと思います。

しかし試合で主導権を握ったのはレアルでした。

今のバルサと対峙するのに、その最大の脅威である「MSN」対策というのは必須科目になります。「MSN」のカウンターという脅威をうまく使い、三列目のポゼッションで安全に試合をコントロールしているのが今季バルサの基調だからです。

その脅威の「MSN」へのレアルの対策が逆説的で面白かったです。無視。どうせマークをつけたり人数をかけてもやられるのならば「MSN」の事は放置!直接的な「MSN」対策はもはや無効だとばかりに、レアルは「MSN」に対して直接的な対策を特別にとっていませんでした。

しかしその分「間接的な」対策に人とエネルギーを傾け、それが見事にハマり、結果多くの時間で「MSN」を無効化するのに成功した訳です。

それが今季バルサのもうひとつの特徴である「三列目のポゼッション」を狙い打ったプレッシングでした。

「De La FOOTBALL LIVE!」の試合前トークライブでも喋りましたが、バルサ不動のピポーテ、ブスケツは怪我でこのクラシコもスタメンから外れていました。代役はCLのシティ戦と同じく「アンカー」のマスチェラーノでした。

レアルはかなり意識的にマスチェラーノにボールを持たせました。ディフェンスラインからマスチェラーノへのパスは黙認。ただし、マスチェラーノにボールが渡った瞬間に、プレッシングを開始していました。

マスチェラーノはあくまで「アンカー」です。危険察知、カバーリング、1対1に関しては世界トップクラス。しかしスムーズにパスを引き出すポジショニング、即座に状況を判断して最適な場所にパスを配給する展開力、プレーが滞った時に一瞬で状況を動かすような意外性のあるロングパスを出す試合を読む感覚は、彼のプレースタイルには必要がない項目だったりします。

ピポーテじゃないアンカーにボールを持たせ、そこを狙い打ち。それを実行する事で「MSN」へ有効なパスの供給を断つ。それがレアルの対バルサの基本戦術だったように思います。

ボールを持てば驚異の「MSN」も、ボールを持たなければただの人。そういう理屈です。さらにいえば攻撃に特化した選手にありがちな、守備にあまり力を入れないという特徴を考えると、ボールを持たせない事に成功した時点で「MSN」は死に駒。ピッチ上から3人消えた状況を作り出す事ができます。

その点でスアレスは守備でも全力を出すタイプなので問題はありませんでした。この試合で穴になってしまったのは両サイド。特にメッシです。


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ボールが来ない事でメッシはポジションを大きく下げて、バルサの三列目にまで顔を出し始めます。それに呼応するようにマッチアップするマルセロはポジションを上げました。

高い位置でボールを持つメッシにマッチアップする不利さは、低い位置でボールを待つメッシに対しては有利へとひっくり返ります。ボールを持っている時は4年連続のバロンドーラ―。ただし守備に追われれば並みの選手以下の貢献度。上がってくるマルセロに対してメッシはほぼ制限を与えれませんでした。

しかもそのマルセロの前方にはそのメッシの連続バロンドール受賞を止めた男、クリスチャーノ・ロナウドが存在するわけです。

結果、レアルは再三左サイドからチャンスを演出。ダニエウ・アウベスはディフェンスラインに張り付けられ、ますます「MSN」は後方と分断されていきます。

そもそもメッシをCFポジションで起用する「偽9番」の生みの親、グアルディオラはなぜメッシを中央に動かしたのか。

よりゴールを狙える位置に置く。危険なバイタルエリアに核弾頭を設置する。そういった狙いももちろんあったでしょう。

しかしマッチアップがセンターバック、つまり「守備を免除できる」ポジションにメッシを置き、守備という労働から解放するという狙いも同時にあったと、全員守備を実践するグアルディオラのサッカーを観ているとどうしても考えてしまいます。

それをルイス・エンリケは戻した。そしてその綻びをアンチェロッティは狙った。「MSN」への有効なパスを断ち、その穴を突く。

特にモドリッチが素晴らしかったです。その切り裂くようなパスはもちろん、パス回しを読んで的確に行うプレッシングが素晴らしかったです。イスコも健闘しました。ラキティッチ、メッシのラインを分断すべく奮闘。そのミッションは成功していました。

セルヒオ・ラモス、ペペも有効なパスは断たれているとはいえ、「MSN」とほぼ1対1を強いられる状況の中で仕事をしていたと思います。

繰り返しますが論理的に試合を支配していたのはレアルだったと思います。やはりサッカーとは個人競技ではなくチーム競技。圧倒的な個も、組織的な戦術で対抗する事ができる競技だと。


しかし、されど、「MSN」。


あの何でもないパス、いやパスにすらなっていなかったただ放り込まれたボールを、激しくプレシャーを受けながらも、一発でチャンスに結びつけるスアレスのトラップ。そこからゴールを見ずに振りぬいて左スミを射抜くあのシュート。

あらゆる論理、組織的な戦術を一瞬のプレーで無効化してしまうのも、結局は個の能力だったりするんです。


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つくづくサッカーって「不完全な競技」だなって思います。「未完成の競技」って言い換えてもいいです。まあだからたまらなく面白いんですけどね!

試合は2-1で落としましたがレアルは胸を張っていいと思います。ここからの復調もありえる素晴らしい敗者でした。そして10回あっても1~2回しか決まらないであろうスーペルゴラッソで勝った今季のバルサにはまだまだ隙があるな、と。

まあ後半にはブスケツも復帰しましたし、「MSN」の完成はついこの間の話。チームとしての成熟が進むこれからのバルサは、はたして「MSN」という強みをどう活かしていくのかに注目していくと面白いと思います。


さて、金曜日にはついに新生日本代表ハリルジャパンの初戦が行われますね。という訳でヨーロッパサッカーモードは一旦お休みして、今週末は代表モードで行きますよ!

ハリルは「モダン・オシム」なんて言われているみたいですが、そのサッカーをとくとみせてもらいます!そして来週の火曜日31日には、「De La FOOTBALL LIVE!」第二弾!「日本×ウズベキスタン」のライブビューイング開催がなんと緊急決定!(詳細はhttp://delafootball.wix.com/delafootballliveをチェック!)

ガッツリ初戦を観て、ハリルジャパンとは?というテーマで当日はトークライブを行いたいと思います!いったいどんなサッカーをするのかまだまだ謎が多く、手探り状態な状況な中、みんなであーだこーだと代表戦を観るってかなり面白いと思いますよ!

平日深夜開催ではなく、仕事帰りにピッタリな19:30キックオフ!ぜひともみなさんで盛り上がって注目のハリルジャパン第二戦を楽しみましょう!

そんな訳で次回はハリルジャパン初戦の分析を行いたいと思います、それでは!

fgo.98 〜後編〜「史上最強の3トップ?バルサの『MSN』」 

今年の初めごろからルイス・エンリケはスアレスとメッシのポジションをコンバート。メッシを右ウイングに、スアレスをセンターに据え始めます。

その効果は絶大でした。


(後編ここから↓)

メッシ、ネイマールという危険なウイングに相手DFは引き寄せられ、ゴール前に陣取るスアレスの周辺にはスペースが生まれます。

するとどうなったか?

スアレスはセンターにコンバートされてから得点を量産。たった2ヶ月で13ゴール。1試合に1点以上のペースを叩き出しはじめました。

そしてこのコンバートはさらなる相乗効果ももたらします。それがメッシの復活です。

ここ数年、メッシは「偽9番」として中央で起用され続けてきました。グアルディオラによって実行されたこの起用方は、中央やや引き目のディフェンスラインと中盤のラインの間でボールを受けるメッシにマークが付ききれず、かつゴールから近い場所でボールを受けられるメリットも合わさって絶大な破壊力をバルサにもたらしました。

しかし最近ではその対策(センターバックが前に出てメッシを捕まえる)と、メッシ自身の運動量の低下で効果は薄れていきます。メッシの輝きの鈍りとともに、バルサの成績も低下していき、バルサの黄金時代は下降期に入ったと言われはじめます。


そこに「本物の9番」がやってきました。「偽9番」は中央の激戦区から離れて、プレッシャーの緩いサイドにポジションを移しました。

そこからスアレス以上の爆発的な得点がメッシに生まれ始めます。


もともと左足一本でドリブルするメッシは、ボールを左側に置くと広大な視野が開け、かつ武器であるカットインがしやすい右サイドでボールを受ける事が顕著でした。

ただし「偽9番」のメッシが右側に行くと、中央はそのスペースに入ってくるネイマール1人だけ。パスコースは読まれやすく、相手ディフェンスはメッシのカットインを最大限注意すれば事足りました。まあそれでもある程度の得点とアシストをメッシは記録してたんですけどね。

しかし右ウイングがポジションの今のメッシには同じ右サイドでボールを持った時に、開ける視野の風景がまるで違います。


中央には「本物の9番」スアレス

逆サイドには天才ドリブラー、ネイマール


しかも目の前にはその二人の怪物に張り付かざるをえない相手ディフェンスラインのほころび、カットインができるスペースも広がっています。

メッシは驚異的なスアレスを上回るペース、2か月で18ゴールを叩き出しました。

それだけじゃありません。スアレスに、ネイマールに、数多くのアシストも決めています。

特にスアレスとのコンビネーションが絶妙です。スアレスはディフェンスラインの裏への飛び出しも得意で、メッシはその動きを見逃がしません。それを警戒し相手ディフェンスラインが下げれば、メッシはカットインでズタズタに切り裂く。メッシがカットインをするとスアレスは律儀にメッシが空けた右サイドをカバー。そしてそこに相手ディフェンダーを引き寄せたメッシからラストパス。

その二人にネイマールも絡んできます。ネイマールはどちらかというと左サイドから離れず、中央に流れてきたメッシの壁パスの相手、もしくはスルーパスの受け手となりサイドをえぐります。そこからマイナスのラストパスをメッシ、スアレス、もしくは走り込むイニエスタに合わせる。

メッシ、スアレス、ネイマール、個の力だけでもトップクラスのこの3人が、連携してゴールに迫ってくる。掛け算どころじゃありません。世界有数の攻撃力が三乗状態。それがバルサの「MSN」です。


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かつてこれだけの力を持ち、そしてこれだけの連携を見せる3トップがあったのか。僕にはちょっと記憶にありません。

その「MSN」に好き放題やらせてしまったのがCLのシティでした。対策はほぼ無策。守備はディフェンダー、攻撃はアタッカー、分業でスペシャリストの個の能力に丸投げする南米サッカーの悪い所がモロに出てしまいました。

「MSN」の圧力に押されて、シティはバルサが攻撃の手を緩めるまで何もできなかったです。試合の主導権を掴んだという余裕、クラシコが頭をよぎる後半にバルサに許される形で反撃をしたに過ぎず、バルサが再び攻勢を強めた試合終盤には、もはや「ジョー・ハート対バルサ」状態!この日評価点7.5点はあげたいハートがいなかったらこの試合は5-0が妥当なスコアだと思います。

もはやディフェンスラインのみで「MSN」に対抗するのは不可能だと思います。現在世界最強の3トップ、いや史上最強と言いたくなるこの3トップに対抗策は無いのか?

そのヒントが散りばめられていたのが、実は今回のクラシコだったんです!サッカーとはやはりあくまでチームの戦い。例え相手に最強の3トップがいたとしても、戦いようはある。それをしかも敵地カンプ・ノウで実行したのが日曜のレアルでした。

「MSN」のあまりの凄さを説明するのに「MSN」ばりの凄まじい破壊力の文量になってしまったので今回はこのへんでやめときます(笑)はたしてレアルが用いた対策とは?

でも来週ってハリルジャパンの初戦があって、やっぱりタイムリーさを考えるとそっちを取り上げなきゃいけないような…と言う事は今週中にまたこのぐらいクソ長いブログをアップしいなくちゃいけないのか?まあ自分は別にいいんですけど、このブログって読み手にかなり負担をかけてるような気が…まあみなさん早く慣れて下さい(笑)

そんなわけでまた次回!近いうちに!

ではでは~


Next De La FOOTBALL LIVE! は 日本vsウズベキスタン!

詳細はこちらから...http://delafootball.wix.com/delafootballlive