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「ハリルジャパンレビュー『代表のオープン化』」


フットピーポーよ!ドラゴンズの7連勝にうかれてて少し遅くなりましたが、今回は先週行われたハリルジャパン二戦目のレビュー、2試合を通してみえた「監督ハリルホジッチとは?」について書いていきます!


前回ブログでテストの側面が強かった一戦目、はたして2戦目のメンバーは?と書きましたが注目のスタメン、その構成が面白かったです。


本田、香川、岡崎、前線には現在の代表の顔ともいえる名前がスタメンに並ぶ一方、中盤から後ろは初代表の昌子をはじめ、チャレンジングなスタメンだったと思います。

チェニジア戦の前半で速攻が機能せず、交代で本田、香川、岡崎が入ってからようやく攻撃の形ができた事からか、第二戦では初めから起用してきましたね。

しかしこの試合ではその前半の方がチームが機能しませんでしたね。原因は新たなメンバーが名前を連ねるディフェンス陣にありました。それは当日の解説でもしゃべりましたがJリーガーセンターバック二人の守備に対する考え方の古さにあります。

サッカーにおいて守備とは元来「防ぐ」という行為でした。しかし90年代初頭、その概念を覆す革命的な戦術がイタリアで誕生します。

それがプレッシングです。当時セリエCのパルマの監督をしていたアリゴ・サッキは全く新たな戦術プレッシングを武器にジャイアントキリングを連発。抜擢されたミランでもそのプレッシングは猛威をふるい、ヨーロッパのあらゆるタイトルを総なめ。唯一、チャンピオンズリーグ(当時の名前はチャンピオンズカップ)の連覇を成し遂げたのもサッキのミランです。

サッキのプレッシング戦術は議論をよびました。なぜならプレッシングは基本的に守備時の戦術ですが、サッキのミランはそれまでの安全第一の守備戦術「カテナチオ」とまるで違う。さらにサッキのミランのウリは攻撃力。高い位置で奪うやいなやファンバステン、フリット、ライカールトの「オランダトリオ」が破壊的な攻撃をしかけるのが特徴だったからです。

それまでの後ろを固める「カテナチオ」と180度違う、ボールホルダーに激しく詰め寄りボールを奪う「プレッシング」。これははたして本当に守備戦術なのか。

その議論からプレッシングはいつしかこう呼ばれるようになります。「攻撃的守備」と。

アタッキングディフェンス。ただ後方に待機して防ぐという受動的な行為ではなく、ボールホルダーに「アタック」して、ボールを「奪う」能動的な守備とでも言いましょうか。

ただしプレッシングにはリスクがつきもの。失敗すれば即GKとの1対1が生まれてしまうディフェンス方法でもありました。そんな事からイタリアでは安全と思われる「カテナチオ」への回帰が始まってしまいます。

ただ、その安全と思われていた「カテナチオ」は実は安全では無かったんです。バルサをリーダーとする進化する攻撃的サッカーを前に、もはやゴール前を固める戦術では勝てなくなります。

「カテナチオへの回帰」とともに、セリエAのイタリア陣営はヨーロッパのトップから転落していきます。

選手たちのアスリート化、個人ではなく組織的にしかける攻撃を前に、もはや後ろを固めても守れない。そして何より、攻撃的サッカーと「攻撃的守備」プレッシングは相性がバツグン。本家イタリアが手放したプレッシングは2000年代急速にヨーロッパに広まります。

そして迎える現在、サッカーの最先端であるヨーロッパで行われている状況はついに「プレッシング合戦」になった。おおまかですが世界の守備戦術の流れです。簡単に言えば「ボールの奪い合い」。これが今のヨーロッパで行われていることです。

その流れに残念ながらのっていないのがアジアです。実は南米も乗り遅れていました。しかしブラジルワールドカップでは見事に南米チームはプレッシング化していましたね。それでも最後はヨーロッパサッカーの権化ともいえるドイツに優勝はさらわれましたが。。

すさまじい長さの前置きになりましたが(笑)、その視点でウズベキスタン戦のディフェンスを見ると、やはりまだまだ「カテナチオ」的なディフェンス概念に、特にJリーガーが囚われているのが目立ちました。

ボールホルダーに対して間合いを取ってズルズルと後退してしまう。結果ディフェンスラインは下がり、バイタルエリアには広大なスペースが広がり、プレスがかからない。

青山のスーパーボレーで先制しながらも、ペースはがっちりウズベキスタンに握られたのはそのため。どちらかと言えばウズベキスタンの方がモダンなサッカーをやっていましたね。「リードしている」という意識から余計に前半の日本のディフェンスは深すぎました。

前半は「速攻」が機能しなかったという側面も考えなければいけません。

「堅守速攻」とは文字通り「堅守」と「速攻」がセットになっています。「堅守」だけオッケー、「速攻」がイマイチ。それではダメなんです。それは古い「カテナチオ」型思考です。「速攻」の為の「堅守」。攻撃から逆算される守備が現代的な「堅守速攻」です。


前半の日本が悪かったのは守備が安定しなかったから、そこから仕掛けられる攻撃の精度もおのずと悪くなっていました。

さらに「速攻」への考え方の古さも目立ちました。「速攻」とは即ロングボール。まるでクリアのようなロングボールが前線目がけて放り込まれるシーンが目立ちました。

「速攻」とはなにもロングボールだけじゃありません。むしろヨーロッパの速攻のメインはショートパスです。精度の高いショートパスで速攻を仕掛ける。それには相手の陣形が崩れてマークがずれていなければいけません。

相手の陣形が崩れている瞬間とは、ボールを奪った瞬間です。制度の悪いロングボールではなくショートパスで、しかも相手ゴールに近い位置からそれを開始したい。

ヨーロッパのほぼ全てのチームがもはや共通事項として狙っているのがそれです。だからこそ現在は「プレッシングの時代」なのです。

ハリルがいい監督だなと思ったのは後半そうそうに今野と水本を代え、日本が前半に抱えていた問題をすぐに修正したところです。

攻撃がうまっくいっていない、じゃあ攻撃の選手を変えよう!ではなくてその原因が守備にあるというところを直ちに修正してくるあたりに感心しました。

水本のアンカーで日本の守備は安定し、バイタルエリアに守備ブロックを形成する事ができました。ボールを前に運べなくなったウズベキスタンに、前線のプレスがハマりだします。

そこからはご存知の通りのゴールラッシュ。宇佐美の彼らしいドリブルシュートも、高い位置でボールを奪ったあとに生まれた事を忘れてはいけません。

ハリルは2試合でフィールドプレーヤーを全員使いました。勝利という結果も出しながら見事なテストです。交代もバッチリ。ピッチに飛び出て激しく指揮を取る感じも悪くないです。どうやら日本はアタリをひいたようですよ。

ハリルはザックとは違い、代表のメンバーを限りなくオープンにしています。次は誰が呼ばれるのか、抜擢されるのか、それはいま行われているJでの活躍次第で誰にでもあり得る話になりました。

今回選ばれた選手は得難い経験を積んだはずです。Jリーグとは違った守備概念、攻撃概念、こうした方がサッカーはうまくいくという理屈。ヨーロッパでプレイする選手の力量。

それをJに持ち帰られるか。ハリルの代表のオープン化はJのレベルアップにつながります。会見でもはっきりとマスコミに訴えるハリルは、うまくいけば日本のサッカーを世界基準に引き上げてくれる人物、昔のトルシエやオシムのような人材かもしれません。

思いのほかいい監督だというのが僕のハリルのイメージでした。しかも彼からは己の信念を貫く哲学のようなものも感じます。周りがなんと言おうと使う選手は使う。そして使わない選手は、使わない。

アジア予選を通じて、そして4年間という時間を使ってどんなチームを作り上げるのか、楽しみな監督が就任してくれました。それが僕の印象です。日本は彼から多くの事を学べそうな、実に現代的な監督だと思いました。それでは!

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