itch の Football goes on vol.117
ロシアワールドカップ その7
「セネガル戦直前プレビュー」
フットボール大国が苦しんでいます。中でもアルゼンチンの症状は深刻です。
あまりに偉大な選手は時としてチームに食あたりを起こしてしまうもの。
ここ最近のアルゼンチンはメッシという劇薬をうまく使うすべが見つからない。
その点、ポルトガルのサントス監督は9人で守って、後はクリスチャーノさんに託すというシンプルな「戦術ロナウド」でうまくクリスチャーノ・ロナウドという劇薬を使いこなせていますね。
「カテナチオ」の守備大国イタリア。天才達による個人技のブラジル。「ゲルマン魂」不屈のドイツ。華麗なパスサッカー「シャンパンサッカー」のフランス。「トータルフットボール」攻撃サッカーの始祖オランダ。「ティキタカ」の無敵艦隊スペイン。
それぞれの国がガラパゴス的に築いた個性は、サッカーのグローバリズム化で「モダンフットボール」というひとつの答えに統一されつつあります。
スペインのティキタカにプレッシングを浴びせ、あわやのシーンを作ったイラン。世界NO.1ゴールキーパー、ナバスを中心とした堅守で王国ブラジルを追い込んだコスタリカ。残り10秒まで前回王者ドイツを追い詰めたスウェーデン。
いまやアジアでもアフリカでも中南米でもいわゆる「良いサッカー」をする時代となりました。
長すぎる前置きとなりましたが、その最近の流れの象徴のようなチームが、第二戦の相手セネガルです。
ポーランド×セネガルをチェックしましたが、びっくりしました。
不運なディフレクションとポーランドのミスからセネガルの得点は生まれたのですが、内容的にはセネガルの完勝。
特に目を引いたのがセネガルのシステマチックな守備戦術でした。
セネガルはこの試合を「4−4−2」で始めたのですが、守備時にはきれいな4×2ラインのブロックを作り、ポーランドの攻撃を迎え撃ちます。
非常に強固な中央ブロックをポーランドは最後までこじ開けられず、強力なプレッシングから危険なショートカウンターを浴び続けていましたね。
いままでのアフリカンチームのイメージはその身体能力を全開に、本能的な、ワイルドなサッカーを展開してくるという感じでした。
しかしセネガルは違います。
各プレーヤーがポジションを忠実に守り、この4×2ラインの守備ブロックは終始乱れず、90分間組織的な守備が機能していました。
特に驚いたのがマネです。マネはセネガルの大エース。カメルーンのエトー、コートジボワールのドログバ的な存在です。
そんなこれまでならば我がままが許される立場のマネが、忠実に自分の持ち場である左サイドのポジションを守っている
マネだけではありません。各プレーヤーがポジショニングに忠実なので布陣に穴が無い。
セネガルチームを観ていると、アフリカンのフィジカルに戦術を叩き込み統率し、コントロールすることに成功した近年のフランスを連想します。
僕が観たかぎりHグループで一番いいサッカーをしているのがこのセネガルです。
ベスト8クラスのチームのように思えます。ハメスがいない10人のコロンビアとは比べ物にならない難敵です。
セネガルのストロングポイントは「守備」だと思います。特に中央ブロックが強烈です。
あの守備大国セリエA屈指のセンターバックと言われる「ナポリの壁」クリバリ。2mのそびえる巨漢サネの強力なセンターバックコンビ。
そしてボランチにエバートンの「ボールハンター」グイエとエンディアイエ。ここにはポーランド戦では控えでしたが圧倒的なフィジカルで中央を制圧するクヤテもいます。
この2+2で作られる中央のブロックは強烈で、あのレバンドフスキでさえも何もさせてもらえないほどでした。
強固な中央ブロックでボールを奪い、左右と中央、全方位に一人づつ置くスピードアタッカーを走らせてくる「堅守速攻」がセネガルのサッカーです。
そんなセネガルにとってショートパスで中央からの攻撃というのは自殺行為です。
こじ開けられないし、何よりも中央エリアというのは相手ゴールにも近いけど、自分のゴールにも近い危険エリア。
例えば同じ高さでボールを失ったとしても、中央とサイドでは自分のゴールまでの距離で約10mぐらいの差があります。
プレーにして1回から2回ぐらい、ディフェンスチャンスの差が出ます。だからボールを奪われるならばサイドで、勝負を仕掛けるのはサイドというのがモダンフットボールの鉄則。
ですからセネガル戦で心掛けたいのが「サイドアタック」の徹底です。
セネガルは中央の2+2のブロックは強烈ですが、両サイドバックの守備にややほころびが見えました。
ポーランドのチャンスは全てサイドバックの裏スペースを使ったもので、両サイドの背後を突き、センターバックかボランチをつり出し中央2+2のブロックを崩すことを目指したい。
中央2+2のブロックがコンパクトな時にはポーランドでさえもノーチャンスでした。レバンドフスキですらポストプレーができず、そこからカウンターを食らう始末。
好調な大迫のポストプレーを過信すると、相手に危険なカウンターチャンスを与えることになりかねません。
ですから僕はセネガル戦では「サイドの攻防」がカギを握ると思います。
おそらく日本はボールを持たされる展開になるはずです。そこで相手の強力なプレッシングに焦らず、ボールを左右に散らす。
サイドに起点を作り、日本が目指すのはサイドバックとサイドアタッカー、そこにもう一人が絡んでサイドの深い位置を目指すコンビプレーです。
そこで問われるのがサイドバックの判断です。マークすべきニアンやサール、マネとの駆け引き。
マークを外してでも前にでるのか、自重してマークし続けるのか。
だからこの試合のキーマンは両サイドバック、中でも右サイドバックの酒井(宏)だと思います。
酒井の相手はセネガルのエースであるマネ。さらにセネガルがツートップの場合はここにニアンも絡んできます。
まず守備に忙殺される酒井ですが、相対的に相手の守備力に不安があるのもこのサイド。
おそらく右サイドを担当する酒井+原口コンビの責任は重大です。ここでの戦いの結果が勝負に直結する気がします。
それとセネガルは攻撃のビルドアップがさほど得意では無いように見えました。
特にセンターバックからのビルドアップが乱れがちで、センターバックへの激しいプレッシングからポーランドはチャンスを作っていました。
かといってセネガルに対して前からハイプレスをかけてゆくのは非常に危険です。セネガルのスピードアタッカー達にスペースを与えることになります。
セネガルのスピードアタッカー達と走りあいの展開になれば、勝てる選手は世界でもそうそういないでしょう。
ですのでこの試合こそどっしりと後ろ目に守備ブロックを作った方がよい気がします。
持たされたボールをしっかり回しつつ、バイタルエリアをしっかりと人数で埋めスペースを消し、相手のスピードアタッカーを走らせない。
そしてサイドに起点を作り、徹底して相手サイドバックの背後を狙う。間違っても中央でボールを失わない。
そしてセットプレーにかける。これがセネガル戦での基本路線です。
いずれにせよ、厳しい戦いになると思います。ですが日本は勝ち点3を既に持っているという所を忘れていけません。
絶対に勝ち点を3が必要な状況じゃないんです。焦る必要はまったくありません。
実はそれはセネガルも一緒。お互いが様子を見ながら進行してゆく重い展開に日本は持ち込みたいところ。
西野監督は「基本的にコロンビア戦のメンバーで」と、セネガル戦のメンバーについてコメントしていました。
勝ったメンバーはいじるなと言われていますが、一つだけ心配な選手がいます。
それはキーパーの川島です。
直前のテストマッチからコロンビア戦、川島は非常に不安定です。基本的にスーパーセーブよりも確実性が問われるのがキーパー。
勝負の第3戦に向けても、この試合で違うGKを試すべきだと僕は思います。第3戦で土壇場のキーパー交代よりも試すならこのセネガル戦。
そんなわけで最後に個人的なスタメン予想で終わろうと思います、前回のコロンビア戦での予想がまったく外れていたのは忘れましょう!
それではまた試合後に〜!
<itch的スタメン>
「4−1−4−1」
GK 中村
DF 長友
酒井(宏)
昌子
吉田
MF 長谷部
柴崎
山口
原口
本田
FW 大迫
<寸評>
不安定な川島に替えて経験を積ませる意味でもGKに中村を。相手の強固な中央ブロックに選手を置くのは無駄。そこでトップ下の代わりにアンカーを置く「4−1−4−1」を採用。
サイドの攻防で選手が引っ張られて中央が薄くなる事態に備えてカバーリングに優れる長谷部をアンカーに。守備的にキツイ右サイドに原口。左サイドには本田。本田は左サイドで「ボールの避難場所」になってもらう。
セットプレーを考えてもチーム唯一左利きの本田を入れておきたい。勝負時には乾と香川をセットで導入。スペースの無いセネガルには香川は後半からが生きるはず。
- [2018/06/24 22:44]
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